「お気に入りのアーティストのMVを、通信量を気にせずいつでも見たい」
「勉強になる解説動画を、通勤・通学中の電波が悪い場所でも見られるようにしたい」
「子供が好きなアニメ動画をダウンロードしておいて、オフライン環境で見せてあげたい」
YouTubeを使っていると、動画をダウンロードして手元に保存しておきたい、と感じる瞬間は多いのではないでしょうか。
実際に、動画のURLを貼り付けるだけで簡単にダウンロードできるウェブサイトや、スマートフォンアプリは数多く存在します。
しかし、その手軽さの裏で、その行為が「違法行為」や「重大なルール違反」にあたる可能性があることを、あなたはご存知でしたか?
この記事では、少し複雑なYouTube動画のダウンロードについて、「法律(著作権法)」と「YouTubeのルール(利用規約)」という二つの側面から解説していきます。
「犯罪になるケース」と「規約違反になるケース」の2種類がある
まず、この記事の核心からお伝えします。
YouTube動画のダウンロードは、状況によってその深刻度が全く異なります。
- 【犯罪】法律違反になるケース
違法にアップロードされたと知りながら動画をダウンロードする行為。
- 【規約違反】ルール違反になるケース
合法的な動画であっても、YouTubeの公式機能以外でダウンロードする行為。
この2つの違いを理解することが、すべての基本です。
特に前者は刑事罰の対象となる、決して軽く考えてはいけない行為です。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
そのダウンロード、「犯罪」かもしれません
最も重く、そして絶対に避けなければならないのが、著作権法に違反する「違法ダウンロード」です。
2012年の著作権法改正により、特定の条件下でのダウンロードは個人の楽しみのためであっても違法となり、罰則の対象となりました。
何が「違法ダウンロード」にあたるのか?
法律で禁止されているのは、以下の2つの条件が揃った場合です。
- 著作権を侵害して、違法にアップロードされた音楽や映像であること
- その事実を知りながら、ダウンロード(録音・録画)すること
具体的には、どのような動画がこれに該当するのでしょうか。
- テレビ番組やアニメ、映画の全編または一部の無断アップロード
- 市販のDVDや有料配信されているライブ映像の無断アップロード
- CD音源に静止画や歌詞を付けただけの、いわゆる「作業用BGM」
- 公式ではないチャンネルがアップロードしているアーティストのMV
これらは、本来、著作権を持つ人(テレビ局、映画会社、アーティストなど)の許可なくアップロードされた「海賊版コンテンツ」です。
これらの動画を「これは明らかに無断アップロードだな」と認識しながらダウンロードする行為は、明確な犯罪となります。
【違法ダウンロードの罰則】 2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。
「知らなかった」と主張しても、例えば公開されたばかりの映画が丸ごとアップロードされているなど、社会通念上「違法であると容易に判断できる」と見なされれば、言い逃れは難しいでしょう。
「公式マークがついていないチャンネルからの転載動画は絶対にダウンロードしない」。
この意識を徹底することが、自分自身を守るために不可欠です。
なぜダウンロードは「規約違反」なのか?
では、クリエイター自身が撮影・編集したオリジナル動画や、公式チャンネルが配信しているMVなら、ダウンロードしても法律的には問題ないのでしょうか?
答えは「はい、著作権法違反にはあたりません」。
しかし、ここで第二の壁、「YouTubeの利用規約」が立ちはだかります。
YouTubeは、ユーザーがサービスを利用する上での約束事を「利用規約」として定めています。
そして、その規約の中で、コンテンツのダウンロードについて以下のように明確に禁止しています。
YouTube利用規約からの抜粋(要約) 本サービスは、本サービス上のコンテンツへのアクセスおよびその利用を、お客様の個人的で非営利的な用途に限り許可します。お客様は、本サービスによって**「ダウンロード」ボタンまたは同様のリンクが明示的に表示されている場合を除き、いかなるコンテンツもダウンロードしてはなりません。**
これはつまり、「YouTubeが公式に提供する方法以外で、動画を自分のデバイスに保存する行為は、例外なくルール違反ですよ」ということです。
外部のウェブサイトにURLを貼り付けたり、専用のアプリを使ったりして動画を保存する行為は、たとえその動画が完全に合法的なものであっても、この規約に違反します。
もし規約違反が発覚した場合、YouTubeアカウントの一次的な停止や、最悪の場合は永久追放(アカウント削除)といったペナルティを受ける可能性があります。
なぜYouTubeはそこまでしてダウンロードを禁止するのか?
と疑問に思うかもしれません。
その理由は、ダウンロードという行為が、YouTubeという巨大なプラットフォームそのものを破壊しかねないからです。
具体的には、主に以下の4つの理由が挙げられます。
広告収入モデルが崩壊するから
YouTubeが無料で利用できる最大の理由は、動画の再生前や途中に流れる「広告」です。
広告主がYouTubeにお金を払い、その一部がクリエイターに還元されることで、この巨大なプラットフォームは成り立っています。
しかし、動画をダウンロードしてしまうと、ファイルには広告が含まれないため、何度再生しても広告は表示されません。
これは、例えるなら「無料で配られている雑誌から、広告ページだけを全て破り取って持ち帰る」ようなものです。
もし皆がそれを始めたら、雑誌の発行元(YouTube)も、記事を書いた人(クリエイター)も収入を失い、やがて雑誌そのものがなくなってしまいます。
クリエイターへの正当な還元がなくなるから
クリエイターにとって、広告収入は活動を続けるための生命線です。
それだけでなく、正確な「再生回数」や「総再生時間」、「視聴者維持率」といったデータは、どんな動画が求められているかを知り、次の作品をより良くするための重要な指標となります。
ダウンロードによるオフライン再生は、これらの収益とデータの両方をクリエイターから奪います。
それは、クリエイターの努力と情熱を踏みにじり、コンテンツ制作のモチベーションを低下させることに直結するのです。
コンテンツの違法な二次利用に繋がるから
YouTubeのプラットフォーム上であれば、「Content ID」という仕組みによって、著作権者が自身のコンテンツを管理・保護できます。
しかし、一度動画がダウンロードされてしまうと、それはYouTubeの管理を離れた単なる「動画ファイル」になります。
その結果、他の動画サイトへの無断転載、悪意のある切り取りや編集、SNSでの違法な拡散といった二次利用が極めて容易になってしまいます。
ダウンロードを禁止することは、クリエイターの著作権という大切な権利を守るための防波堤でもあるのです。
公式サービス「YouTube Premium」の価値を守るため
YouTubeは、こうした「オフラインで楽しみたい」という需要に応えるため、公式の有料サービス「YouTube Premium」を提供しています。
このサービスに加入すれば、広告なしでの視聴はもちろん、公式機能として動画を一時保存し、オフラインで再生することが可能です。
この月額料金は、広告収入の代わりとして、クリエイターにきちんと分配されます。
もし外部のツールで誰もが無料でダウンロードできてしまうなら、この公式サービスの存在意義がなくなってしまいます。
規約でダウンロードを禁止するのは、この健全なシステムを守るためにも不可欠なのです。
まとめ
ここまで見てきたように、YouTube動画のダウンロードは、法律とルールの両面から非常に多くの問題をはらんでいます。
- 違法アップロード動画のダウンロード
→ 犯罪。絶対に手を出してはいけません。
- 合法動画のダウンロード(非公式な方法)
→ 規約違反。クリエイターを傷つけ、自分のアカウントも危険に晒す行為です。
では、私たちはどうすればいいのでしょうか。
答えは非常にシンプルです。
「ダウンロードという選択肢を捨て、YouTubeのルールの中で楽しむこと」
そして、もしどうしても通信量を節約したい、オフライン環境で視聴したいという強いニーズがあるのなら、クリエイターへの感謝と応援の気持ちを込めて、「YouTube Premium」に加入することを検討してみてください。
それが、私たちが愛するYouTubeという文化と、そこで活躍する素晴らしいクリエイターたちを守り、育てていくための、最も賢明で誠実な選択と言えるでしょう。