「好きなVtuberやストリーマーの面白い瞬間を、もっと多くの人に知ってほしい!」
そんな思いから、配信の「切り抜き動画」を作ってみたいと考えている方は多いのではないでしょうか。
切り抜き動画は、配信者の魅力を広め、新たなファンを生み出すきっかけとなる素晴らしいファン活動の一つです。
しかし、その一方で「他人の配信を勝手に使っていいの?」「著作権とか大丈夫?」といった不安もつきまといます。
この記事では、これから切り抜き動画を始めたいあなたが安心して活動できるよう、許可の必要性から具体的な確認方法、そして守るべきマナーまで解説していきます。
切り抜き動画に「許可」は必要です
まず、最も重要な大原則からお伝えします。
Vtuberやストリーマーの配信アーカイブを切り抜き動画にする場合、原則として配信者本人(または所属事務所)の許可が必要です。
なぜなら、配信の映像や音声は、配信者が創作した「著作物」だからです。
著作権法では、著作権者の許可なく著作物を複製、編集、公開することを禁じています。
無断で切り抜き動画を投稿する行為は、この著作権侵害にあたる可能性があるのです。
そう思われるかもしれません。
実は、Vtuber・ストリーマー業界には、ファンによる二次創作活動を促進するための特殊な文化があります。
それが「ガイドライン」の存在です。
多くの配信者や事務所は、ファン活動としての切り抜きを重要な宣伝手段と捉え、一定のルールを設けることで、包括的に利用を許可しています。
したがって、私たちが取るべき正しい行動は「無断で勝手に作る」のではなく、「公開されているガイドラインを探し、そのルールを100%遵守して作る」ということになります。
許可の取り方完全ガイド
では、具体的にどうやって許可を確認すればよいのでしょうか。
その答えは、ほとんどの場合「ガイドライン」に書かれています。
個別に「切り抜いていいですか?」と連絡する前に、必ず以下の場所を確認しましょう。
ステップ1:ガイドラインが掲載されている場所を探す
配信者が「企業所属」か「個人」かによって探す場所は少し異なりますが、主に以下の場所で公開されています。
- 所属事務所(プロダクション)の公式サイト
ホロライブ(カバー株式会社)や、にじさんじ(ANYCOLOR株式会社)のような大手事務所に所属しているVtuberの場合、事務所が包括的な二次創作ガイドラインを定めています。これが最も公式で、最も信頼できる情報源です。 - 探し方: 「〇〇(事務所名) 二次創作ガイドライン」「〇〇(会社名) ガイドライン」などで検索すれば、すぐに見つかります。
- 例:
カバー株式会社「二次創作ガイドライン」
ANYCOLOR株式会社「二次創作ガイドライン」
- 本人のYouTubeチャンネルの概要欄
チャンネルページの「概要」タブは、自己紹介や各種リンクがまとめられている場所です。ここに切り抜きに関するルールや、ガイドラインへのリンクを記載している配信者は非常に多いです。まずはここをチェックしましょう。
- 本人のX(旧Twitter)のプロフィールや固定ツイート
自己紹介欄や、常にタイムラインのトップに表示される「固定ツイート」に、切り抜きに関する方針を簡潔に記載している場合があります。見落とさないようにしましょう。
- Twitchなど、他の配信プラットフォームのプロフィール
YouTubeだけでなく、Twitchなど他のプラットフォームで主に活動しているストリーマーの場合、そちらのプロフィール欄にルールが書かれていることもあります。
ステップ2:ガイドラインの内容を徹底的に読み込む
ガイドラインを見つけたら、内容を隅から隅まで、一言一句丁寧に読み込みましょう。
多くの場合、以下の項目についてルールが定められています。
これらのルールを守ることが、配信者へのリスペクトの証です。
■ 出典の明記(クレジット表記)
これは、ほぼ全てのガイドラインで義務付けられています。切り抜き動画は、あくまで元の配信があってこそのコンテンツです。
視聴者が元配信にたどり着けるよう、動画の概要欄に以下の情報を必ず記載しましょう。
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元となった配信アーカイブのURL
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配信者のチャンネル名とチャンネルへのURL
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配信者のX(旧Twitter)などSNSのアカウント
これらを明記することで、あなたの動画をきっかけにチャンネル登録者や元配信の視聴者が増え、配信者の応援に直接つながります。
■ 収益化の可否
切り抜きチャンネルを運営する上で、最も気になるのが収益化の問題でしょう。
これに関する方針は、配信者や事務所によって大きく異なります。
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収益化OK: 多くの配信者は、ガイドラインの範囲内であればYouTubeのパートナープログラムによる広告収益化を許可しています。
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収益化NG: 収益化は一切認めない、という方針の配信者もいます。この場合は絶対に収益化設定をしてはいけません。
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条件付きでOK: 例えば、にじさんじは「ANYCOLOR二次創作ライセンス許諾プログラム」への登録を条件に収益化を認めています。このような特定の条件がないか、必ず確認しましょう。
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法人での収益化は別途許諾が必要: 個人やサークルでのファン活動はガイドラインの範囲内でOKとしつつも、法人が事業として切り抜きを行う場合は別途連絡・許諾が必要、としているケースもあります。
■ 禁止事項(これをやったら即アウト!)
ガイドラインには、切り抜き動画で「やってはいけないこと」が明確に定められています。
これらを破る行為は、配信者のイメージを著しく損ない、最悪の場合、著作権侵害の申し立てや動画の削除要請、法的措置につながる可能性もあります。
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悪意のある編集や、誤解を招く表現:
配信者の発言の一部だけを切り取って、本来の意図とは違う意味に捻じ曲げたり、ネガティブな印象を与えたりする編集は絶対に許されません。
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有料コンテンツの切り抜き:
メンバーシップ限定配信、ファンクラブ限定コンテンツ、有料ライブイベント、販売されているボイスなど、お金を払った人だけが見聞きできるコンテンツを切り抜いて公開することは、固く禁じられています。これは配信者のビジネスモデルを破壊する行為です。
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公式と誤認させる行為:
チャンネル名やアイコン、サムネイルなどを公式のものとそっくりにし、視聴者が公式チャンネルだと勘違いするようなデザインにすることは禁止されています。
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誹謗中傷や公序良俗に反する内容:
特定の人物への攻撃や、差別的な内容、過度に性的な表現など、配信者や他の視聴者を不快にさせるコンテンツは論外です。
ガイドラインが見つからない場合(個人勢など)はどうすればいい?
特に個人で活動しているVtuber(個人勢)の場合、明確なルールを設けていないケースもあります。
このような場合、どう判断すればよいのでしょうか。
結論から言うと、「許可が明記されていない場合は、やらない」というのが最も安全で、誠実な対応です。
著作権の原則に立ち返れば、「許可されていない=やってはいけない」と考えるのが基本です。
とはいえ、黙認あるいは歓迎している可能性を探るためのヒントはいくつかあります。
- 本人の過去の発言を調べる
配信中やSNSで、「切り抜きどんどん作ってね!」「ハッシュタグつけてくれたら見に行くよ!」といったポジティブな発言をしていないか探してみましょう。
- 他の切り抜きチャンネルと本人の反応を見る
すでに他のファンが作った切り抜き動画が存在し、それに対して配信者本人が「いいね」やリポストをしたり、配信で「〇〇さんの切り抜き面白かった!」などと好意的に言及したりしている場合。これは、切り抜きを黙認、または歓迎している可能性が高いサインと言えます。
そして、本当の最終手段として・・・
- 直接問い合わせる
どうしても切り抜きを作りたいという強い思いがあり、かつ上記の方法でも意向が確認できない場合は、最終手段として問い合わせる方法もあります。X(旧Twitter)のDMやマシュマロ、公開されているビジネス用のメールアドレスなどに連絡してみましょう。
ただし、配信者は非常に多忙です。
返信が来ない可能性が高いこと、また「切り抜きに関する個別のお問い合わせにはお答えできません」と明記している場合もあることは覚悟しておきましょう。
重要なのは、これらのヒントはあくまで「黙認の可能性」を探るものであり、「正式な許可」ではないということです。
配信者の方針が変われば、いつでも禁止されるリスクは残ります。
意向が不明な場合は、トラブルを避けるためにも手を出さないのが賢明な判断です。
なぜルールを守る必要があるのか?切り抜き活動の心構え
最後に、なぜこれほどまでにルールやマナーを守ることが重要なのかについてお話します。
切り抜き動画は、あなたの「好き」という気持ちから生まれる素晴らしいファン活動です。
その活動は、配信者本人への最大限のリスペクトの上に成り立つべきものです。
ルールを無視した身勝手な切り抜きは、配信者を悲しませ、傷つけるだけでなく、以下のような悪影響を及ぼす可能性があります。
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配信者本人が切り抜きを全面禁止にしてしまう
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事務所のガイドラインがより厳格なものに改定される
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他のファンが真面目にルールを守って活動している中、界隈全体のイメージが悪化する
あなたの行動一つが、大好きな「推し」の活動や、界隈全体の未来に影響を与えるかもしれないのです。
ルールとマナーを守って作られた質の高い切り抜き動画は、配信者にとっても、ファンにとっても、そしてあなた自身にとってもプラスになります。
まとめ
切り抜き動画は、配信者の魅力を凝縮し、新たなファンへと届ける「愛の架け橋」です。
この記事を参考に、ぜひルールとマナーを守った上で、あなたの「好き」を形にしてみてください。
あなたの作る動画が、誰かにとって新たな「推し」と出会うきっかけになるかもしれません。