VTuberやストリーマー界隈を賑わす大型企画。そ
の中でも、オープンワールドゲーム「グランド・セフト・オートV(GTA5)」を舞台にした参加型イベントは、数々のドラマを生み出し、一大ジャンルとして確立しました。
今回は「マッドタウン(MADTOWN)」についての話題を記事にしていきます。
多くの配信者が架空の街に集い、ギャングや警察、一般市民としてそれぞれの役割を演じるこの企画。
第一回は大きな熱狂を生み出しましたが、現在開催中の第二回に対して、SNSやコメント欄では「つまらない」「もう飽きた」といった厳しい声が相次いでいます。
なぜ、あれほど熱狂を生んだはずの企画の続編が、これほどまでに厳しい評価を受けているのでしょうか。
本記事では、マッドタウン第二回が「つまらない」と叩かれる原因を深掘りし、一部のファンにとってなぜこの期間が「地獄」と化してしまうのか、そして、それでもなぜ配信者たちは参加し続けるのか、その構造的な問題を徹底的に解説します。
栄光と熱狂の第一回
第二回の問題を語る前に、まずは第一回がどのようなイベントだったかを振り返る必要があります。
マッドタウンは、無法地帯の街を舞台に、参加者がギャングとして組織を拡大したり、警察として治安を守ったり、あるいは全く別の役割で生きていく様を配信するロールプレイング(RP)企画です。
有名ストリーマーたちが一同に会し、予測不能な人間ドラマや大規模な抗争を繰り広げる様子は、多くの視聴者を魅了しました。
普段は見られない配信者同士の意外な化学反応、手に汗握る銃撃戦、そして仲間との絆。
これらの要素が絡み合い、まさに「お祭り」と呼ぶにふさわしい盛り上がりを見せたのです。
ハマった視聴者は寝る間も惜しんで様々な視点の配信を追いかけ、コミュニティ全体が大きな熱気に包まれました。
しかし、この熱狂の裏で、すでに問題の萌芽は見て取れました。それは「1ヶ月という長すぎる開催期間」です。
イベント開始当初こそ、その目新しさから多くの視聴者が夢中になりました。
しかし、1週間、2週間と時間が経つにつれ、「毎日同じことの繰り返しに見える」「展開がマンネリ化してきた」という声が上がり始めます。
実際、「最初の一週間がピークで、あとは惰性で見ていた」「途中で完全に飽きてしまった」という視聴者は決して少なくありませんでした。
また、有名配信者だけでなく、比較的小規模な配信者も多く参加するため、時にコミュニケーションの齟齬や「空気が読めない」と評される行動が問題視される場面もありました。
つまり、第一回の成功は、「ハマる人はとことんハマるが、合わない人や途中で飽きてしまう人も多い」という、ある種の危うさを内包したものだったのです。
そして第二回は、この構造的な問題を解決できないまま、さらに深刻な形で露呈させることになりました。
なぜ第二回は「つまらない」と叩かれるのか?3つの深刻な要因
視聴者が第二回に対して抱く「つまらない」という感情。
その根源を紐解くと、主に3つの要因が浮かび上がってきます。
最も大きな原因は、コンテンツとしての「マンネリ化」です。これは複数の要素が複合的に絡み合っています。
GTAイベントの乱立による食傷感
近年、ストリーマー界隈では「VCR GTA」や「ストグラ」など、GTA5をプラットフォームとした大型企画が立て続けに開催されています。
それぞれに特色はあるものの、視聴者から見れば「またGTAか」という食傷気味の状態にあることは否めません。
かつては新鮮だった「ストリーマーたちがGTAの世界で暴れる」という光景が、今や見慣れたものになってしまったのです。
この新鮮味の欠如が、第二回への期待値を下げ、厳しい評価に繋がる土壌を作ってしまいました。
長すぎる開催期間と単調なゲーム展開のループ
第一回でも指摘された「1ヶ月」という期間設定。
第二回でもこれが踏襲されたことが、マンネリ感を決定的にしました。
人間の集中力や熱量が1ヶ月も持続することは稀です。
さらに問題なのは、イベント内での活動が「銀行強盗とその準備」という単一の目標に収束しがちな点です。
配信画面に映し出される光景は、多くの場合、以下のループになります。
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作戦会議:仲間と次の強盗計画を練る。
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準備:武器や車両、ハッキングツールなどを調達する「作業」時間。
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実行:銀行や施設を襲撃する。
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攻防:駆けつけた警察とカーチェイスや銃撃戦を繰り広げる。
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結果:逃げ切るか、捕まる。
この中で、視聴者が最も興奮するのは「3. 実行」と「4. 攻防」ですが、配信時間の大半を占めるのは「2. 準備」です。
この準備段階は、プレイヤーにとっては目標達成のために不可欠なプロセスですが、見ている側にとっては地味で退屈な「作業」にしか映りません。
毎日何時間も、同じような準備作業を見せられ続ければ、飽きるのは当然と言えるでしょう。
ドラマティックな展開が起きにくい構造が、視聴者の離脱を加速させているのです。
また、コンテンツのマンネリ化に追い打ちをかけたのが、参加メンバーの変化です。
第一回と比較して、第二回ではいわゆる「超有名ストリーマー」の参加が減りました。
もちろん、多くの人気配信者が参加していることに変わりはありませんが、界隈全体を牽引するようなトップ層の不在は、視聴者層の広がりを限定的にしてしまいました。
その結果、参加者の多くが中堅〜新規のストリーマーで構成されることになり、視聴者にとっては「知らない人たちが内輪でワイワイやっている」という印象を強く与えてしまっています。
自分の好きな配信者(推し)が出ているから見る、という動機はあっても、その推しが知らない人たちと楽しそうにしている光景に、果たしてどこまで感情移入できるでしょうか。
物語に入り込むためのハードルが、第一回よりも格段に高くなっているのです。
さらに、ロールプレイの質に対する不満も散見されます。
特に、ギャングが警察に捕まった際のやり取りなど、緊張感が求められる場面での言動が視聴者の期待を裏切り、「冷めてしまった」という感想に繋がることがあります。
RPの世界観に没入して見ている視聴者ほど、その世界観を壊すような言動に敏感になります。
この没入感の阻害が、コンテンツへの失望を招いている側面もあるでしょう。
そして、これが最も根源的な問題かもしれません。
れは、「やっている側(プレイヤー)」と「見ている側(視聴者)」の間に存在する、埋めがたい楽しさのギャップです。
配信者にとって、マッドタウンは最高に楽しい遊び場です。
GTAのようなサンドボックスゲームは、決められたレールの上を走るのではなく、自分たちで目標を設定し、仲間と協力してそれを達成するプロセスそのものが醍醐味となります。
仲間とのくだらない雑談、作戦会議での真剣な議論、地道な準備作業、そして計画を実行するスリル。
これらすべてが、能動的に参加しているプレイヤーにとってはかけがえのない、刺激的な「体験」です。
しかし、視聴者はその「体験」を画面越しに受動的に眺めることしかできません。
プレイヤーが「目標のための重要な準備」と感じている時間は、視聴者にとっては「何も起きない退屈な時間」です。
プレイヤーが「仲間との楽しいコミュニケーション」と感じている内輪ネタは、視聴者にとっては「疎外感を感じる会話」かもしれません。
この「能動的な楽しさ」と「受動的な面白さ」の乖離こそが、マッドタウンの評価が大きく分かれる最大の原因です。
プレイヤーが熱中すればするほど、その熱が視聴者に伝わるとは限らない。
むしろ、その熱中が視聴者を置き去りにしてしまう危険性を、この企画は孕んでいるのです。
イベントにハマれないファンにとっての「地獄の1ヶ月」
こうした状況は、特にイベントにハマれなかったファンにとって、文字通り「地獄の1ヶ月」となります。
推しの配信が見られないという苦しみ
ファンにとって、推しの配信は日々の楽しみであり、生活の潤いです。
しかし、マッドタウン期間中、参加者はイベントに多くの時間を拘束されます。
その結果、普段行われている雑談配信や、別のゲーム実況といったコンテンツが、1ヶ月もの長期間にわたって事実上ストップしてしまいます。
ファンからすれば、これは深刻な「供給不足」です。
見たいものが見られないストレスが溜まり、「早くマッドタウン終わってくれ」と願うのは、自然な感情でしょう。
ファン活動が停滞し、最悪の場合、ファン離れを引き起こすリスクすらあります。
強制的なコラボがもたらす人間関係のストレス
推しがどのギャングに入るか、誰と行動を共にするかは、ファンには選べません。
もし、推しと同じチームに、自分がどうしても苦手な配信者や、過去に不祥事を起こした人物がいた場合、どうなるでしょうか。
「推しの活躍は見たい、でもあの人が映るのは見たくない」
このジレンマは、視聴者にとって大きな精神的負担となります。
推しを見るために、苦手な人物を1ヶ月間も見続けなければならない状況は、まさに苦行です。
SNSで推しの名前を検索すれば、苦手な配信者との切り抜き動画が流れてくるかもしれません。
この強制的なコラボレーション状態が、ファンを疲弊させているのです。
改善の道はあるのか?企画の未来への提言
では、マッドタウンは完全に失敗だったのでしょうか?そう結論づけるのは早計です。
こうした大型企画は、中堅や新人ストリーマーにとっては、自身の知名度を飛躍的に向上させる大きなチャンスです。
また、コミュニティ全体の交流を促し、新たな化学反応を生むという重要な役割も担っています。
問題なのは、企画の構造が視聴者の視点を置き去りにしがちである点です。
この点を改善できれば、より多くの人が楽しめるイベントになる可能性は十分にあります。
視聴者からは、すでに具体的な改善案がいくつも上がっています。
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開催期間を2週間程度に短縮する
熱量が維持しやすく、中だるみを防ぐ最も効果的な方法です。
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イベント内に変化をもたらす仕組みを導入する
例えば「1週間ごとに役職をシャッフルする」「特殊なミッションを運営側が提示する」など、マンネリを防ぎ、新たなドラマを生むためのテコ入れが求められます。
プレイヤーの「楽しい」と視聴者の「面白い」を、いかにしてシンクロさせるか。
そのための工夫が、今後の大型企画には不可欠です。
まとめ
マッドタウン第二回が「つまらない」と評されるのは、決して参加している配信者が悪いわけでも、企画のコンセプトが間違っているわけでもありません。
その原因は…
- GTAイベントの飽和と長すぎる期間がもたらした「マンネリ化」
- 参加メンバーの変化による「内輪ノリ感」
- プレイヤーと視聴者の間に横たわる根本的な「温度差」にあります。
やっている側は最高に楽しい。
しかし、その楽しさが視聴者に正しく伝わらなければ、配信コンテンツとしては成立しません。
このジレンマを乗り越え、プレイヤーの熱狂を視聴者の興奮へと昇華させるための新たなアイデアと工夫が、今、求められているのではないでしょうか。
今後の大型企画が、この課題に対する一つの答えを示してくれることを期待しています。