【切り抜き】動画編集はどこまでAIにまかせられる?Geminiが得意な作業は?逆に人間の方が早い作業は?【YouTube】

YouTubeやTikTokで、もはや見ない日はない「切り抜き動画」。

好きな配信者やコンテンツの面白い部分だけをサクッと楽しめる手軽さから、多くの視聴者に愛されています。

 

その一方で、切り抜き動画を作る切り抜き師は、常に時間との戦いを強いられています。

数時間に及ぶ元動画からハイライトを探し出し、テロップを入れ、テンポよく編集する…。

1本のショート動画に、想像以上の手間と時間がかかっているのが現実です。

 

「もっと効率的に、もっと多くの動画を作りたい!」

そんな悩みを抱えるクリエイターの前に現れたのが、Geminiをはじめとする生成AIです。

 

しかし、AIは魔法の杖ではありません。万能に見えるAIにも、得意なことと不得意なことがあります。

この記事では、実際に私が切り抜き動画制作でAI(主にGemini)を使い倒した結果たどり着いた、「AIに任せるべき作業」「人間がやるべき作業」の最適な切り分け方について、徹底的に解説します。

 

AIは「超優秀なアシスタント」

本題に入る前に、この記事の結論からお伝えします。

切り抜き動画制作におけるAIと人間の理想的な関係は、「AIは副操縦士、人間は機長」です。

 

  • AIが得意なこと:

    • 膨大なデータから特定のパターンを見つけ出す「分析・抽出作業」

    • ゼロから1を生み出すための「アイデア出し・壁打ち」

    • 単純で時間のかかる「文字起こしなどの単純作業」

  • 人間がやるべきこと:

    • 動画の「面白さ」を最終的に判断する「意思決定」

    • 視聴者の感情を揺さぶる「クリエイティブな表現」

    • チャンネル全体の方向性を決める「プロデュース」

 

AIに面倒な下準備やリサーチを任せ、人間は最も重要な「クリエイティブな味付け」に集中する。

これが、AI時代の切り抜き動画制作における勝利の方程式です。

 

では具体的に、どの作業をGeminiに任せ、どの作業を自分の手で行うべきなのでしょうか。

私の実践例を交えながら、詳しく見ていきましょう。

 

 

Geminiが人間を圧倒する3つの得意作業

色々試した結果、私が「これは絶対にGeminiに任せた方が早いし質も高い」と確信した作業は、以下の3つです。

 

1. チャット欄から切り抜きシーンを見つける

数時間のライブ配信。そのどこにハイライトが隠されているのか。

これまでは、配信を見返しながら、コメントの盛り上がりや自分の記憶を頼りに探すしかありませんでした。

この作業は、まさに宝探しであり、同時に非常に骨の折れる作業です。

しかし、Geminiを使えば、この宝探しを劇的に効率化できます。

 

 

具体的な手法:

  1. YouTubeの配信アーカイブから、チャットログをテキストファイルとしてダウンロードします。(専用のツールや拡張機能を使えば簡単です)

  2. そのテキストファイルをGeminiに読み込ませ、以下のような指示(プロンプト)を出します。

プロンプト例:

添付したテキストファイルは「〇〇というゲーム実況配信」のチャット欄のコメントです。この中から、特に視聴者が盛り上がっていると思われる時間帯を5つ抽出してください。

 

この指示により、Geminiは数万行にも及ぶチャットログを瞬時に解析し…

  • 「〇時間〇分ごろ:視聴者から『www』というコメントが殺到。配信者が珍しいミスをした可能性」
  • 「〇時間〇分ごろ:『神』『天才』という単語が頻出。スーパープレイがあった可能性」

といった形で、客観的なデータに基づいたハイライト候補をリストアップしてくれます。

これにより、動画を全て見返す必要がなくなり、切り抜きシーンをすぐに発見し、効率的に編集作業を始めることができるのです。

 

 

2. 地獄の文字起こし作業からの完全解放

切り抜き動画の生命線ともいえるテロップ。

しかし、その元となる文字起こしは、多くのクリエイターを絶望させてきた、最も時間のかかる作業の一つです。

動画を再生し、止め、聞き取り、打ち込む…この単純作業の繰り返しに、一体どれだけの時間が溶けてきたことでしょう。

この作業こそ、AIが最も得意とする領域です。

 

具体的な手法:

  1. 編集したい動画部分を、音声ファイル(mp3)として出力します。

  2. その音声ファイルをGeminiにアップロードし、シンプルにこう指示します。

プロンプト例:

この音声ファイルを文字起こししてください。

たったこれだけです。

Geminiは非常に高い精度で音声を認識し、数分から数十分の音声であれば、1分も経たずにテキストデータに変換してくれます。

もちろん、専門用語や独特な言い回しで誤認識することもありますが、ゼロから手で打ち込む労力に比べれば、その修正作業は無に等しいと言えるでしょう。

 

これまで数時間かかっていた作業が、わずか数分で終わる。

この革命的な時間短縮によって生まれた余裕を、私たちは後述する「人間がやるべきクリエイティブな作業」にすべて注ぎ込むことができるのです。

 

 

3. アイデアが枯渇しない「無限の企画会議」

「最高のシーンを切り抜いた!でも、どんなタイトルにすればクリックされるんだろう…」「サムネイル、いつも同じような構図になっちゃうな…」

動画の内容と同じくらい重要なのが、視聴者の興味を引くタイトルとサムネイルです。

しかし、毎回ヒットするアイデアを出し続けるのは至難の業。

そんな時、Geminiは最強のブレインストーミングパートナーになってくれます。

 

 

具体的な手法:
動画の内容を伝え、以下のような形でアイデアを求めます。

タイトル案のプロンプト例:

「人気VTuberが、視聴者からの衝撃的な告白に絶句する」という内容の切り抜き動画です。ターゲットは20代の男女。思わずクリックしたくなるような、好奇心を煽るタイトル案を10個考えてください。

すると、Geminiは…

  • 「【放送事故】リスナーのヤバすぎる告白に、〇〇が言葉を失った瞬間」
  • 「【神回】常識が崩壊…V界を震撼させた衝撃の告白がこちら」

といった、自分一人では思いつかなかったような多様な切り口のタイトルを提案してくれます。

 

同じようにサムネイルの案も出してもらいましょう。

サムネイル案のプロンプト例:

サムネイルの構図を3パターン提案してください。配信者の表情、入れるべきテロップの文言、全体のデザインや色使いなどを具体的に記述してください。

このように、具体的な指示を出せば、デザインのアイデアまで提供してくれます。

もちろん、最終的に採用するかは自分次第ですが、アイデアの「たたき台」が無限に出てくることで、企画段階で悩む時間が劇的に減り、制作の初速が格段に上がります。

 

 

 

【人間がやるべき!】AIにはまだ早い、クリエイターの腕の見せ所

さて、AIがいかに優秀でも、現時点では絶対に人間の手が必要な領域があります。

それは、動画の「面白さ」や「魅力」に直結する、極めてクリエイティブな作業です。

 

1. 動画の「間」を制する、芸術的なカット編集

AIは、会話のない「無音区間」を自動でカットする機能を持っています。

これは一見便利ですが、ここに大きな落とし穴があります。

なぜなら、面白い動画は「間」でできているからです。

 

  • ツッコミを待つ「間」: ボケた後、ツッコミが入るまでの絶妙な静寂。

  • 衝撃を増幅させる「間」: 衝撃的な事実が明かされた後の、数秒間の沈黙。

  • 期待感を煽る「間」: 何かが起こる前の、意図的な「溜め」。

これらの「間」は、視聴者の感情を揺さぶり、笑いや驚きを最大化させるための重要な演出です。

AIはこれを「不要な無音」と判断してカットしてしまいますが、優れた編集者はこの「間」を意図的に作り出し、会話のリズムをコントロールします。

 

カット編集は、単に不要な部分を削る作業ではありません。

音楽家が音符と休符でリズムを作るように、映像と沈黙を組み合わせて、視聴者の心を惹きつけるテンポ感を生み出すクリエイティブな作業なのです。

この領域は、まだまだ人間の感性がAIを圧倒しています。

 

 

2. 感情をデザインする、魂のテロップ装飾

Geminiが文字起こしをしてくれたテキストを、そのまま動画に載せるだけでは、魅力的な切り抜き動画にはなりません。

テロップは情報を伝えるだけのツールではなく、感情を表現する演出装置だからです。

 

  • 驚きや絶叫: 文字を巨大化させ、赤や黄色で縁取り、画面を揺らすエフェクトを加える。

  • 面白いツッコミ: ポップなフォントを使い、斜めに傾けたり、特徴的な色を使ったりする。

  • 静かな感動: 細めの明朝体を使い、そっと画面の隅に表示する。

どの言葉を、どのタイミングで、どんなデザインで強調するのか。

この判断は、動画の文脈と配信者の感情を深く理解していなければできません。

 

さらに、テロップのスタイルは、そのチャンネルの「個性」や「ブランド」そのものになります。

「あのチャンネルのテロップ、面白いよね」と視聴者に認知してもらうためには、AIが生成した画一的なデザインではなく、クリエイター自身のセンスで作り上げた独自のスタイルが必要です。

この「感情のデザイン」こそ、視聴者に「この人の編集、好きだな」と思わせる、人間ならではの腕の見せ所なのです。

 

 

まとめ

今回は、切り抜き動画制作におけるAIと人間の最適な役割分担について、私の実体験を基に解説しました。

  • AIに任せるべき作業:

    1. チャット欄の分析によるハイライト抽出

    2. 音声ファイルからの文字起こし

    3. タイトルやサムネイルのアイデア出し

  • 人間がやるべき作業:

    1. 動画の「間」とテンポを操るカット編集

    2. 感情を表現するテロップ装飾

 

重要なのは、「AIに仕事を奪われる」と考えるのではなく、「面倒な作業はAIに押し付けて、自分はもっと楽しい創造的な部分に集中する」というマインドセットです。

AIという超優秀な副操縦士を手に入れた今、私たちはこれまで以上にクリエイティブな飛行に挑戦できます。

分析や単純作業から解放された時間を使って、新しい編集表現を研究したり、視聴者とのコミュニケーションを深めたり、次の企画を練ったりすることができるのです。

 

テクノロジーは日進月歩で進化していきますが、最終的に視聴者の心を動かすのは、作り手の「熱意」や「センス」、そして「遊び心」です。

あなたもぜひ、Geminiを最高の相棒にして、自分にしか作れない、最高に面白い切り抜き動画という大空へ、飛び立ってみてください。

 

と、Geminiの力を借りつつ記事を書いてみました。