昨今、Vtuberのオーディションは増加の一途をたどっています。
私は放送作家という仕事柄、そのオーディションの審査に携わる機会があります。
今回は、その経験から見えてきた、Vtuberになるための最初の難関「オーディション用動画」を突破するためのコツを、審査員の視点から解説していきます。
合否を分ける「オーディション用動画」の重要性
Vtuber事務所のオーディションでは、一次審査として「プロフィールなどの応募書類」と、自分をアピールするための「PR動画」の提出が求められるのが一般的です。
応募書類は項目を埋めれば完成しますが、問題はPR動画です。
ここで審査員に良い印象を与えられなければ、次のステップに進むことはできません。
極端な話、応募書類に多少の記入ミスがあったとしても、それを補って余りあるほどPR動画が素晴らしければ、一次審査は通過できるでしょう。
それほど、このPR動画は重要視されています。
どんな動画を撮ればいい?内容とクオリティ
動画の内容に厳密な決まりはありません。
雑談形式のトーク、ゲーム実況、歌、特技の披露など、自分の魅力を最も伝えられると思うもので大丈夫です。
ただし、どんな内容であれ「ファンはつくか?」という視点で評価されるため、最低限のクオリティは絶対に必要です。
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ゲーム実況: ボソボソと話しているだけで、楽しさが伝わってこない。
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歌: 音程やリズムが不安定で、歌詞も間違えている。
これでは、審査を通過するのは難しいでしょう。
もし言葉に詰まったり、噛んでしまったりしたら、その部分は必ずカット編集してください。
オーディションには、面白くてクオリティの高い動画が本当に数多く送られてきます。
その中で比較された時、「噛んでいるシーン」は明確なマイナスポイントとなり、見劣りしてしまう原因になります。
機材と編集はどこまでこだわるべき?
Vtuberにとって「声」は命です。
せっかく魅力的な声を持っているのに、音質の悪いマイクで録音してしまっては、その魅力は半減してしまいます。
スマートフォンの内蔵マイクなどでは、残念ながらあなたの声の本当の良さをアピールしきれません。
最近は数千円で購入できるマイクでも、非常に音質の良いものがたくさんあります。
Vtuberを目指す上での最初の投資だと考え、ぜひ外付けマイクを用意しましょう。
テロップや効果音を多用するような、凝った編集は必ずしも必要ではありません。
なぜなら、デビュー後に動画編集を自分で行うケースは少なく、審査員も編集技術そのものを評価しているわけではないからです。
しかし、「不要な間をカットする」という最低限の編集は必須です。
審査員は、限られた時間で膨大な数の動画をチェックします。
そのため、無言の時間や間延びした部分が続くと、早送りされてしまう可能性があります。
最悪の場合、あなたの一番見てほしいアピールポイントが飛ばされてしまうかもしれません。
審査員に早送りの隙を与えない、テンポの良い動画作りを心がけましょう。
一番やりがちなミス:「長すぎる自己紹介」
これは本当にもったいないと感じるケースですが、動画の冒頭で1分以上も自己紹介に時間を費やしている動画が非常に多いです。
審査員が知りたいのは「言葉での説明」ではなく「実践での証明」です。
「特技は早口言葉です!小学生のときから早口が得意で~」とか「歌が得意です!カラオケではいつも98点以上で~」と長々と語られるよりも、実際に披露してもらった方が、魅力は何倍も伝わります。
また、先に「得意です」と宣言してしまうと、無意識に評価のハードルを上げてしまうことにも繋がります。
審査を通過していく動画の多くは、冒頭の自己紹介は「〇〇です、よろしくお願いします!」と名前を言う程度で済ませ、すぐにゲーム実況や特技披露といった本編に入っています。
結論:審査員の心に残る動画とは?
「こうすれば100%受かる」という絶対の正解はありません。
しかし、審査を通過する動画には、一つの共通点があります。
それは、「その人の魅力や良さが、はっきりと伝わってくる動画」であることです。
「この人、トークが面白いな」「思わず聞き入ってしまうくらい歌が上手い!」「元気な実況で応援したくなる」
審査員にそう思わせることができれば、オーディション通過に大きく近づきます。
逆に、「元気がないな」「自信がなさそうに話しているな」という印象を与えてしまうと、厳しい結果になるでしょう。
自分が何をアピールしたいのかを明確にし、「自分自身が楽しむ」という気持ちで、自信を持って動画制作に挑戦してみてください。