「このコメント、めちゃくちゃ『いいね』が付いてるのに、なんでこんな下の方にあるんだろう?」
YouTubeのコメント欄を見ていて、そんな風に思ったことはありませんか?
あるいは、コメントに付いている「低評価(バッドボタン)」を押しながら、「これって本当に意味があるのかな…?誰にも数は見えないし…」と疑問に感じたことがあるかもしれません。
実は、その「見えない低評価」こそが、コメント欄の表示順を左右する非常に重要なカギを握っています。
この記事では、多くの人が知らないYouTubeコメント欄のアルゴリズムの謎を解き明かしていきます。
そもそも…コメントの低評価は誰にも見えない
本題に入る前に、基本的な仕様をおさらいしておきましょう。
YouTubeのコメント欄では、高評価(グッドボタン)の数は誰でも見ることができます。
コメントを投稿した本人には、誰かが高評価を押してくれるたびに通知が届くこともあります。
一方で、低評価(バッドボタン)の数は、コメント投稿者、チャンネル運営者、他の視聴者、その誰にも一切表示されません。
もちろん、誰が低評価を押したのかも分かりませんし、通知がいくこともありません。
動画本体の低評価数も2021年に非表示化されましたが、コメント欄の低評価はそれ以前からずっと非表示のままでした。
だからこそ、「押しても意味がない」「ただの気休め」と感じている人が多いのではないでしょうか。
しかし、YouTubeがこの機能を残しているのには、明確な理由があるのです。
低評価ボタンの本当の役割とは?アルゴリズムへの「信号」
では、意味がないように思える低評価ボタンは、一体何のために存在するのでしょうか?
その答えは、「コメントの表示順位を決定するアルゴリズムへの、強力なフィードバック機能」です。
YouTubeのコメント欄は、デフォルトで「トップコメント」順に並べられています。
この「トップ」とは、単純に高評価の数が多い順、という意味ではありません。
YouTubeのアルゴリズムが、「他の視聴者にとって価値が高く、健全な議論を促進する可能性のあるコメント」を総合的に判断し、順位を決定しています。
低評価ボタンは、このアルゴリズムに対して「このコメントは価値が低い」「不適切だ」「議論の参考にならない」というマイナスの信号を送る役割を担っているのです。
つまり、私たちが低評価ボタンを押す行為は、投稿者への直接的な攻撃や意思表示というよりも、「YouTubeさん、このコメントは表示順位を下げるべきですよ」とシステムに報告しているようなものなのです。
なぜ低評価の数は表示されないのか?3つの理由
YouTubeが意図的に低評価数を隠しているのには、コメント欄の環境を健全に保つための深い狙いがあります。
1. 「低評価爆撃」による集団いじめの防止
もし低評価数が可視化されていたらどうなるでしょうか?
特定のコメントに対して、集団で低評価を押し、その数字が増えていく様子を見て楽しむ…といった「低評価爆撃(荒らし行為)」が横行する可能性があります。
これは、投稿者に対する精神的な攻撃に直結します。
数を非表示にすることで、このような悪質な行為の動機を削いでいるのです。
2. 無用な対立や争いの抑制
「私のコメントに低評価を押したのは誰だ!」といった犯人探しや、低評価の数をめぐる言い争いは、コメント欄の雰囲気を著しく悪化させます。
数字が見えないことで、人々は不毛な対立を避け、より建設的な議論に集中できるのです。
3. アルゴリズムのための純粋なデータ収集
他人の評価は、私たちの判断に影響を与えます。
「低評価がたくさん付いているから、きっと悪いコメントなんだろう」と、内容を吟味せずに同調して低評価を押してしまう…という「バンドワゴン効果」が起こり得ます。
数を非表示にすることで、他人の評価に左右されない、一人ひとりの純粋な意見をデータとして収集し、アルゴリズムの精度を高める狙いがあります。
高評価が多いのにコメントが下に表示される理由
さて、ここまでの解説で低評価の重要性をご理解いただけたと思います。
それを踏まえて、冒頭の謎「高評価がたくさん付いているコメントが、なぜか下の方に表示される」理由を解き明かしていきましょう。
結論から言うと、その理由は「目に見える高評価の数を、目に見えない低評価の数が上回るほど、あるいはそれに匹敵するほど多く付いているから」です。
アルゴリズムが最も重視するのは、高評価の絶対数ではありません。
「高評価と低評価のバランス」です。
ここに、2つのコメントがあると仮定しましょう。
- コメントA
- 高評価:1000件
- 低評価:800件 (※見えない)
- コメントB
- 高評価:500件
- 低評価:10件 (※見えない)
この場合、高評価の「数」だけを見れば、コメントAが圧倒的に優勢です。
しかし、アルゴリズムはこう判断します。
- コメントA:多くの支持を得ているが、同時に多くの反発も買っている「賛否両論の分断を招くコメント」だ。
- コメントB:支持の数はAに劣るが、ほとんど反発がなく「多くの人に穏やかに受け入れられている健全なコメント」だ。
YouTubeは、プラットフォーム全体の健全性を保つことを目指しています。
そのため、たとえ多くの注目を集めていても、分断や対立を生む可能性のあるコメントAより、広く受け入れられているコメントBの方を「価値が高い」と判断し、上位に表示するのです。
これが、高評価がたくさん付いているように見えるコメントが、コメント欄の下の方に沈んでいるカラクリです。
そのコメントは、実は「炎上」とまではいかなくとも、水面下で多くの否定的な評価を集めている「隠れ炎上コメント」なのかもしれません。
他にもある!コメント順位を左右する要因
もちろん、コメントの順位は高評価と低評価のバランスだけで決まるわけではありません。
他にも、以下のような様々な要因が複雑に絡み合っています。
- 返信の数
多くの返信が付き、議論が活発に行われているコメントは評価が高まります。 - コメントの鮮度
投稿されてから時間が経っていない、新鮮なコメントほど上位に表示されやすい傾向があります。 - チャンネル運営者からの反応
投稿者本人から「ハートマーク」を付けてもらったり、返信をもらったりしたコメントは、評価が大きく上がり、最上位に固定されることもあります。 - スパム報告
多くのユーザーから「スパム」として報告されたコメントは、たとえ高評価が付いていても順位が強制的に下げられます。
これらの要素が総合的に評価され、私たちの目に触れるコメント欄の序列がリアルタイムで構築されているのです。
まとめ
今回は、YouTubeコメント欄の低評価にまつわる謎を解説しました。
- 低評価ボタンは、コメントの表示順を下げるための、アルゴリズムへの重要な信号である。
- 低評価数が非表示なのは、いじめや争いを防ぎ、コメント欄の健全性を保つため。
- 高評価が多くてもコメントが下にあるのは、それを上回る「隠れた低評価」が付いている可能性が高い。
- アルゴリズムは高評価の数より、「高評価と低評価のバランス」を重視する。
あなたが普段何気なく押している高評価・低評価ボタン。
それは単なる意思表示ではなく、その動画のコメント欄全体の質を決定づけるための一票です。
建設的で面白いコメントには高評価を、不適切で無関係なコメントには低評価を。
その一つ一つの小さなアクションが、YouTubeという巨大なプラットフォームの秩序を、少しずつ良い方向へ導いているのです。
次にコメント欄を見るときは、ぜひその裏側で働く壮大なアルゴリズムの存在に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。