「今日の配信、楽しみだな!」
大好きな推し(Vtuber)の配信通知を見て、心を躍らせる。
それはファンにとって、一日の中でも特に幸せな時間のはず。
しかし、配信画面に表示されたサムネイルに、あなたの心は一瞬で凍りつきます。
「コラボ相手が、あの人だ…」
あなたがどうしても苦手な、あるいは過去に何かがあって「嫌い」だと感じている人物が、推しの隣にいる。
楽しみにしていた気持ちは一瞬で消え去り、代わりにドス黒いモヤモヤが心を支配する。
「見たい、でも、見たくない」。
スマホを握りしめたまま、あなたと同じように画面の前で固まっているファンは、決して少なくありません。
この記事は、そんな風に「推しのコラボ相手が苦手」という、誰にも言えない複雑な悩みを抱えるあなたのために書いていきます。
なぜ、こんなにも辛いのか?感情の正体を深掘りする
まず、この問題がなぜこれほどまでに私たちの心を苦しめるのか、その理由を少しだけ深掘りしてみましょう。
感情を言語化するだけで、少しだけ客観的になれるかもしれません。
「推しの世界」に浸りたいのに…という断絶感
私たちがVtuberを応援するとき、その人の声やトーク、ゲームプレイだけでなく、その人が作り出す「世界観」や「空気感」も丸ごと愛しています。
それは、私たちにとって心を休めるための大切な居場所です。
しかし、そこに苦手な人物が登場すると、その世界は突然、居心地の悪い空間に変わってしまいます。
純粋に推しの姿だけを見ていたいのに、視界の端に映る苦手な人の言動が気になって集中できない。
楽しむべき場所で、楽しめない。この断絶感が、大きなストレスとなるのです。
推しへの「心配」という名の親心
「あの人とコラボすると、推しの評判が悪くなるんじゃないか?」
「なんだか、推しがうまく利用されているように見える…」
単にコラボ相手が嫌いというだけでなく、そのコラボが推しにとってマイナスに働くのではないか、という心配から辛くなるケースもあります。
ファンだからこそ、推しにはいつも輝いていてほしい。
そんな親心にも似た感情が、「なんであんな人と…」という憤りや悲しみに繋がってしまうのです。
周囲との温度差からくる「疎外感」
SNSを開けば、「今日のコラボ最高だった!」「てぇてぇ(尊い)!」といった感想が溢れかえっている。
他のファンたちが無邪気に楽しんでいる中で、自分だけが全く楽しめていない。
その温度差は、まるで自分一人が仲間外れにされたかのような孤独感や疎外感を生み出します。
「私の感覚がおかしいのかな?」と、自分自身を責めてしまうことさえあるでしょう。
これらの複雑な感情が絡み合い、「推しのコラボ相手が苦手」という悩みは、想像以上に深く、根強いものになるのです。
「クレームを入れたい!」その気持ち、一旦立ち止まってみよう
このモヤモヤをどうにかしたくて、「いっそ本人や運営にクレームを入れてしまおうか」という考えが頭をよぎるのは、ごく自然なことです。
自分の気持ちを伝えたい、この状況を変えてほしい、と願うのは悪いことではありません。
しかし、その衝動のままに行動する前に、一度だけ立ち止まって考えてみてください。
伝え方や伝える場所を間違えると、事態が良い方向に向かうどころか、あなた自身や、そして何より大好きな推しを傷つけてしまう可能性があるからです。
もし、それでもどうしても「意見」として伝えたいのであれば、いくつかの方法と、絶対に守ってほしい「伝え方の極意」があります。
もし「意見」を伝えるなら?具体的な方法と注意点
- Vtuber本人へ(マシュマロ・質問箱など)
匿名で送れるサービスは、比較的意見を伝えやすい場所です。ただし、毎日大量のメッセージを受け取っている中で、ネガティブな意見は想像以上に本人の心を削ることを忘れてはいけません。
- 所属事務所へ(公式サイトのお問い合わせフォームなど)
企業としてファンの意見を収集している窓口です。「一人のファンからの、今後の活動に対する要望」という形で、より客観的な意見として受け取ってもらえる可能性があります。
伝え方の「極意」:減点法より、加点法で
ここが最も大切なポイントです。
あなたの目的は「嫌いな人を見ないこと」かもしれませんが、それをそのまま伝えてはいけません。
- やってはいけないNG例
「〇〇さん(コラボ相手)が嫌いなのでコラボしないでください!見る気が失せます!」 「どうしてあんな人とコラボするんですか?がっかりしました」
このような攻撃的で、自分の感情を一方的にぶつける「減点法」の伝え方は、相手を困らせ、悲しませるだけです。
これではただの「厄介なファン」だと思われても仕方がありません。
- 心がけたいOK例
「△△さん(推し)のソロ配信が大好きなので、もっと頻度を増やしていただけるとすごく嬉しいです!」 「△△さんが一人でじっくり語る雑談配信が、日々の癒やしです。また企画してください!」
お気づきでしょうか。
OK例では、苦手なコラボ相手のことは一切触れていません。
その代わりに、あなたが「何を見たいか」「何が好きか」を具体的に伝えているのです。
これが「加点法」の伝え方です。
「〇〇とのコラボをやめて」と要求するのではなく、「ソロ配信を増やしてほしい」と要望する。
結果的にあなたの望む配信が増える可能性があり、なおかつ推しをポジティブに応援するメッセージとして届きます。
あなたの愛ある「好き」の気持ちを伝えることで、未来の活動方針に良い影響を与える。
それが、ファンと推しにとって最も健全な関係性ではないでしょうか。
行動する前に知っておきたい「3つのリスク」
それでもなお、直接的な意見を伝えようとする前に、知っておいてほしいリスクがあります。
- 推しを深く傷つけるリスク
Vtuberも一人の人間です。彼らにも仕事上の付き合いや、長年の友人関係があります。ファンから「あなたの友人が嫌いだ」と言われることが、どれほど辛いことか想像してみてください。あなたのたった一言が、大好きな推しの心を曇らせ、活動のモチベーションを奪ってしまう可能性さえあるのです。
- 他のファンとの対立を生むリスク
あなたが苦手だと感じるコラボを、心の底から楽しみにしているファンも大勢います。あなたの意見は、そうしたファンたちの「好き」を否定することにも繋がりかねません。ファン同士の対立は、コミュニティ全体の雰囲気を悪くし、結果的に推しが活動しづらい環境を作ってしまいます。
- 「厄介ファン」認定のリスク
一度「活動方針に口を出す、自己中心的なファン」だと認識されてしまうと、そのイメージを払拭するのは困難です。最悪の場合、コメントをブロックされたり、距離を置かれたりする可能性も。そうなってしまえば、楽しいはずの「推し活」は、ただただ辛いだけのものになってしまいます。
クレームよりも大切。自分の心を守るための6つの具体的な対処法
では、私たちはどうすればいいのでしょうか。
答えは、他人を変えようとすることではなく、自分自身の心を守り、楽しみ方を変えることにあります。
ここからは、今日からすぐに実践できる具体的なアクションをご紹介します。
① 「見ない」という権利を行使する
最もシンプルで、最も効果的な方法です。
ファンだからといって、全ての活動を追いかける義務はありません。
苦手なコラボ配信は、きっぱりと「見ない」。その選択は、決して悪いことではありません。
無理して見てストレスを溜めるくらいなら、その時間を自分の好きなことに使いましょう。
推しの過去の好きなアーカイブを見返す、別の趣味に没頭する、ゆっくりお風呂に入る。
あなたの時間は、あなたのものです。
② アーカイブという名の「安全地帯」を活用する
リアルタイムでの視聴は、コメント欄の盛り上がりなども含めて辛いかもしれません。
そんな時は、後日公開される「アーカイブ」を活用しましょう。
アーカイブなら、苦手な人が話している部分をシークバーで飛ばしたり、推しが一人で輝いているシーンだけを切り取って見たりと、自分のペースで楽しむことができます。
③ SNSデトックスで情報を遮断する
コラボの話題で盛り上がるタイムラインを見るのが辛いなら、物理的に情報を遮断しましょう。
X(旧Twitter)などには、特定のキーワードやハッシュタグ、アカウントからの投稿を表示させない「ミュート機能」があります。
「コラボ相手の名前」「コラボ配信のハッシュタグ」などをミュート設定しておけば、不意に情報が目に入ってきて心を乱されることもありません。
「ブロック」や「ミュート」は、決して悪い機能ではありません。
あなたの心を守るための、正当な自衛の武器なのです。
④ 応援の形は「視聴」だけじゃない、と知る
推しを応援する方法は、配信を見ることだけではありません。
- ファンアートを描いてSNSに投稿する
- (許諾されている範囲で)好きなシーンの切り抜き動画を作る
- 公式グッズを購入して活動を金銭的に支援する
- イベントがあれば参加して、直接「好き」を伝える
あなたが楽しめる形で、あなたの「好き」を表現すること。
それら全てが、立派な応援の形です。
配信を見られない罪悪感を感じる必要は全くありません。
⑤ 信頼できる仲間とだけ気持ちを共有する
溜め込んだモヤモヤは、誰かに聞いてもらうだけで楽になることがあります。
ただし、それをSNSのオープンな場所で吐き出すのはNG。
先述したように、他のファンとの争いの火種になりかねません。
信頼できる友人や、SNSの鍵付きアカウントなど、ごく限られた安全な場所で「ここだけの話だけど…」と気持ちを打ち明けてみましょう。
同じ気持ちを共有できる仲間が見つかるかもしれません。
⑥ 究極の選択「距離を置く」勇気
何を試してもうまくいかず、推し活そのものが苦痛になってしまったら。
それは、一度推しから「距離を置く」べきサインかもしれません。
これは「ファンをやめる」ということではありません。
あくまで「大好きだからこそ、少しだけお休みする」のです。
趣味でストレスを溜めていては本末転倒。
心穏やかに「やっぱり推しが好きだな」と思える日が来たら、またいつでも戻ってくればいいのです。
まとめ
推しが嫌いな人とコラボする。
それはファンにとって、本当に辛く、もどかしい問題です。
しかし、その感情のままに誰かを攻撃したり、コントロールしようとしたりすることは、あなたも、推しも、他のファンも、誰も幸せにしません。
大切なのは、あなたの「好き」という気持ちを守ること。
そして、あなたが心から楽しめる応援の形を見つけることです。
全部の配信を追わなくたっていい。苦手なものからは、そっと離れていい。
あなたの「推し活」の主役は、他の誰でもない、あなた自身なのですから。
どうか、自分自身の心を一番大切にしながら、これからも続く長い「推し活」ライフを、あなたらしく楽しんでくださいね。