「この焼きたてのメロンパン、最高に美味しそう!」
「新オープンのお店のタピオカ、動画で紹介したいな…」
グルメ系YouTuberやインスタグラマーにとって、魅惑的な食べ物との出会いは絶好のシャッターチャンス。
しかし、そのカメラを向ける指先が、ふと止まる瞬間はありませんか?
「これって、許可なく撮影していいんだっけ…?」
この疑問は、すべての動画クリエイターが一度は通る道です。
楽しいはずの動画制作が、意図せずお店や他の方とのトラブルに発展してしまっては元も子もありません。
そこでこの記事では、食べ歩き動画を撮影する際の「許可」について、法律的な観点とマナーの両面から徹底的に解説します。
曖昧になりがちなグレーゾーンを明確にし、誰もが気持ちよく動画制作と食事を楽しめるための常識を身につけていきましょう。
動画撮影の前に知るべき大原則:「なぜ許可が必要なの?」
と感じる方もいるかもしれません。
撮影許可の背景には、お店側が持つ重要な権利と、他のお客様への配慮が存在します。
お店の権利:「施設管理権」
すべての店舗には「施設管理権」という権利があります。
これは、お店の管理者が、その施設内の安全や秩序を維持し、お客様が快適に過ごせる環境を守るための権利です。
この権利に基づき、お店は「撮影禁止」といった独自のルールを設けることができます。
たとえあなたが「料理しか撮らないから」と思っていても、店内でカメラを構えるという行為自体が、お店のルールに抵触する可能性があるのです。
他の人の権利:「肖像権」と「プライバシー」
あなたにとっては被写体ではない「背景」も、他の人にとってはプライベートな空間です。
意図せず他のお客様や店員さんの顔が映り込んでしまうと「肖像権」の侵害にあたる可能性があります。
また、顔が映っていなくても、「誰が、いつ、どこで、誰と食事をしていたか」という情報は、プライバシーに関わるデリケートな情報です。
他のお客様が安心して食事を楽しむ権利を守るためにも、無許可の撮影は慎むべきです。
トラブルを未然に防ぐリスク管理
お店側からすれば、無断で撮影している人が「何のために」「どのような内容で」動画を公開するのか分かりません。
もし否定的な内容で編集されたり、誤った情報が拡散されたりすれば、お店の評判に傷がつくリスクがあります。
許可を求めるというプロセスは、お店側にとってのリスク管理でもあるのです。
これらの原則を理解した上で、具体的なケースを見ていきましょう。
【ケース別】この撮影、許可は必要?徹底解説
質問の多い3つのケースに、さらに「公道での撮影」を加えた4つのパターンで、許可の要否と注意点を詳しく解説します。
ケース①:【原則不要】テイクアウト商品を「公園などお店と無関係の場所」で撮る
お店の許可は原則として不要です。
購入した商品は、あなたの所有物です。そのため、お店の敷地外である公園や公共のベンチなどで、商品だけを撮影することにお店の許可は必要ありません。
とはいえ…
- 撮影場所のルールは遵守する
公園や公共施設によっては、三脚の使用や「商業目的とみなされる撮影」を禁止している場合があります。長時間の撮影や大掛かりな機材の使用は避け、周囲の迷惑にならないようにしましょう。
- 通行人への配慮を忘れずに
背景に他の人がはっきりと映り込まないよう、アングルを工夫しましょう。個人が特定できる形で公開すると、肖像権の問題に発展する可能性があります。
- 後片付けは完璧に
食べ終わった後のゴミを放置するのは言語道断。クリエイターとしての以前に、人としてのマナーです。
ケース②:テイクアウト商品と「お店の外観」を一緒に撮る
法律的にはグレーゾーンですが、トラブル回避と良好な関係のために許可を得ることを強く推奨します。
公道から見える建物の外観を撮影すること自体は、直ちに違法とはなりません。
しかし、YouTubeやSNSで「〇〇店の商品です」と紹介する場合、その動画はお店の「看板」を背負うことになります。
では、なぜ許可を取った方がいいのか?
- お店側の安心感
お店の前でカメラを構えていると、「何をしているんだろう?」と店員さんを不安にさせてしまったり、入店しようとする他のお客様の妨げになったりする可能性があります。一言声をかけるだけで、お店側は安心してあなたの活動を見守ることができます。 - より良い動画コンテンツに繋がる
許可を得る際に少し会話を交わすことで、「実はこの商品は〇〇にこだわっていて…」「今の季節ならこちらもおすすめですよ」といった、動画の深みを増す貴重な情報を得られるかもしれません。 - 予期せぬチャンスも?
あなたのチャンネルを気に入ってもらえれば、お店の公式SNSで動画をシェアしてくれるなど、協力的な関係が生まれることもあります。無断撮影からは、決して生まれないポジティブな連鎖です。
「こんにちは!こちらで〇〇をテイクアウトしたのですが、とても美味しそうなので、お店の看板も入れてSNSで紹介させていただきたいです。少しだけ撮影してもよろしいでしょうか?」
この一言があるだけで、結果は大きく変わります。
ケース③:「店内」で「自分の手元にある食べ物だけ」を撮る
たとえ料理だけであっても、店内での撮影は必ず許可が必要です。
これが最も誤解されがちなポイントです。
「自分の料理しか撮らないから大丈夫だろう」という考えは通用しません。
前述の通り、あなたがいるのはお店の「施設管理権」が及ぶ空間だからです。
- 「撮影行為」そのものが許可の対象
お店が管理しているのは「何を撮るか」ではなく、「店内で撮影という行為をするか否か」です。スマホを少し構えるだけでも、他のお客様にとっては威圧的に感じられることがあります。
- お店の雰囲気(世界観)を守るため
静かなカフェや高級レストランでは、食事と会話を楽しむ「空間」そのものが商品です。カシャカシャというシャッター音や、撮影に夢中になる姿は、その店の世界観を壊してしまう可能性があります。
- 意図せぬ映り込みのリスク
あなたは料理に集中していても、カメラの画角に他のお客様の声や姿が入り込んでしまうリスクは常に付きまといます。
以上のことから、手元だけを撮影する場合でも、トラブル回避のために許可を取っておいた方が良いでしょう。
ケース④:お店が立ち並ぶ「商店街など公道」での食べ歩き撮影
公道での撮影は自由ですが、個々のお店や通行人への配慮が不可欠です。
商店街を歩きながら撮影する場合、特定の店舗の許可は不要なことが多いです。
しかし、いわゆる「迷惑系」と見なされないための細心の注意が求められます。
《公道撮影での注意点》
- 特定店舗へのフォーカスは避ける
特定のお店を背景に長く撮影したり、店内を覗き込むようなアングルで撮影したりするのは、ケース②と同様に許可を得るのがマナーです。
- 通行の妨げにならない
食べ歩きに夢中になるあまり、立ち止まったり、集団で道を塞いだりしないようにしましょう。特に自撮り棒を使う際は、周囲の人や物にぶつからないよう安全確保が最優先です。
- 「ながら食べ」禁止エリアの確認
観光地などでは、安全や美観のために「歩きながらの飲食」を条例で禁止している場合があります。必ず地域のルールを確認し、指定された場所で食べるようにしましょう。
スマートな撮影許可の取り方ガイド
という方のために、好印象を与える許可の取り方をステップでご紹介します。
- タイミングを見計らう
お店が最も忙しいランチのピークタイムや、行列ができている時に声をかけるのは避けましょう。アイドルタイム(お客様が少ない時間帯)を狙うのがおすすめです。 - 責任者に声をかける
アルバイトの店員さんでは判断が難しい場合があります。「店長さんか、責任者の方はいらっしゃいますか?」と尋ね、判断権限のある方に直接お願いするのがスムーズです。 - 自己紹介と目的を明確に
怪しい者ではないと分かってもらうために、まずは丁寧に自己紹介をしましょう。
【会話例】
「お忙しいところ恐れ入ります。私、〇〇という名前でYouTubeチャンネルを運営しております。こちらの〇〇(料理名)が大変美味しいと伺いまして、ぜひ私のチャンネルで紹介させていただきたいのですが、お料理の動画を撮影させていただくことは可能でしょうか?」
- お店への配慮を言葉で示す
お店側の懸念を払拭するために、「配慮します」という姿勢を具体的に伝えましょう。
【付け加えたい一言】
- 「他のお客様のお顔や、声が入らないように最大限配慮いたします。」
- 「お店のロゴやメニューもしっかり映して、宣伝になるように頑張ります。」
- 「撮影は〇分程度で、静かに素早く行います。」
もしも断られても、感謝を忘れずにしましょう!
お店の方針や状況によっては、撮影を断られることも当然あります。
その際は、決して食い下がったり、不満な顔を見せたりしてはいけません。
「承知いたしました。お忙しい中ご対応いただき、ありがとうございます。お料理、楽しみにいただきます!」 と笑顔で答えましょう。
その丁寧な対応が、次のチャンスに繋がるかもしれません。
まとめ
食べ歩き動画の撮影許可は、単なる「ルール」や「手続き」ではありません。
それは、美味しい料理を提供してくれるお店へのリスペクトであり、同じ空間を共有する他のお客様への「思いやり」の表れです。
- 店内では必ず許可を取る。
- お店の外観を撮るなら、一言声をかけるのがベスト。
- 公道では、周囲への配慮を絶対に忘れない。
この基本を心に刻めば、トラブルを避けられるだけでなく、お店の方々との温かい交流が生まれ、あなたの動画はもっと深く、もっと魅力的なものになるはずです。
マナーを守って、美味しいグルメの感動を、たくさんの人に届けましょう!