【YouTube】音MADは著作権侵害の危険性大!「みんなもやってるじゃん」が通用しない怖い理由【SNS】

 

「あの名シーンを、この曲でMADにしたら最高に面白いだろうな…」

「このセリフ、リズムに乗せたら神動画が作れるかもしれない…!」

 

YouTubeやニコニコ動画でクオリティの高い音MADを見ると、その技術とセンスに感動し、「自分でも作ってみたい!」という創作意欲が湧いてきますよね。

好きな作品への愛を形にする、最高にクリエイティブな活動です。

しかし、その情熱のままに動画を完成させ、「アップロード」ボタンを押す前に、一度だけ立ち止まって考えてみてください。

 

なぜ音MADは「法律違反」になるのか?

HIKAWA
音MADは違法って本当?逮捕されちゃうの?

 

結論からハッキリ言います。

あなたが作ろうとしている音MADは、他人が作った作品(著作物)を無断で利用・改変・公開する行為であり、著作権法という法律に違反する可能性が極めて高いのです。

 

「著作権」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、とてもシンプルです。

これは、作品を作った人が持つ「これは私のものだ。私の許可なく勝手に使ったり、変えたり、配ったりしないでね」と主張できる権利のことです。

 

例えば、あなたが一生懸命描いたイラストを、見知らぬ誰かが勝手にコピーし、色を塗り替え、「自分が描きました!」とSNSに投稿していたら、どう思いますか?「ふざけるな!」と怒りを感じるはずです。

著作権は、そうした創作者の気持ちや努力、権利を守るための大切な法律なのです。

アニメ、ゲーム、映画、音楽、CM…これらすべては、多くの人々が時間と労力をかけて生み出した大切な「著作物」です。

 

音MAD制作は、この著作権を様々な形で侵害してしまいます。

 

 

具体的に、どの法律に触れるの?

身近な例で考えてみましょう。

音MADを作ることは、「人気レストランの看板メニューを勝手に厨房から持ち出し(複製)、自分の好みで激辛ソースをかけ(改変)、それを自分の店先で『新メニューです!』と配る(公開)」ような行為です。

どう考えてもアウトですよね。

 

音MAD制作と公開は、主に以下の4つの権利を侵害します。

  • 複製権(コピーする権利)
    アニメの映像や音楽を、自分のパソコンに取り込む行為です。他人の著作物を許可なくコピーすることは、原則として許されていません。
    ※「個人的に楽しむためならコピーしても良い(私的複製)」という例外はありますが、ネットに公開する目的でのコピーは、この範囲を超えてしまいます。

  • 翻案権(作り変える権利)
    元の映像を切り貼りしたり、セリフの音程を変えたり、キャラクターに別のことを言わせたりする「改変」行為です。元の作品をどうアレンジするかを決める権利は、作った本人(権利者)にしかありません。

  • 公衆送信権(インターネットで公開する権利)
    これが最大の問題点です。完成した音MADをYouTubeやニコニコ動画にアップロードする行為がこれにあたります。自分のパソコンの中だけでこっそり楽しんでいる分には「私的利用」で済まされるかもしれませんが、ネットに上げた瞬間に不特定多数の人が見られる状態になり、完全に法律違反となります。

  • 同一性保持権(勝手に変えられない権利)
    これは、作者が「自分の作品は、こういう意図で作ったんだ。勝手にイメージを壊すような変え方はしないでくれ」と主張できる権利です。特に、元の作品を笑いものにしたり、全く違う文脈で使ったりする行為は、この権利を侵害する可能性があります。

このように、音MADの制作から公開までの工程は、著作権法の地雷原を歩くようなものなのです。

 

 

「みんなやってる」の落とし穴。なぜ誰も捕まらないのか?

HIKAWA
でも、YouTubeとかにMAD動画が多数上がってるけど?誰も捕まってないよね?

 

ここまで読んで、「法律違反だというなら、なぜネットには音MADが溢れているんだ?」「有名な投稿者もいるのに、なぜ逮捕されないの?」と疑問に思うはずです。

その答えは、「黙認」という名の一時的な平和の上に、現在のMAD文化が成り立っているからです。

 

「黙認」とは、「本当はルール違反だけど、今回は見逃してあげるよ」という状態です。

決して「許可(OK)」ではありません。

 

 

例えるなら、校則で禁止されているお菓子の持ち込みと同じです。

クラスのほとんどの生徒がお菓子を持ってきていても、それは校則違反である事実に変わりはありません。

先生が「まあ、授業の邪魔にならないなら…」と見て見ぬふりをしているだけで、もし校長先生が「今日から風紀を正す!お菓子は一切禁止だ!」と宣言すれば、その瞬間から全員が罰則の対象になります。

音MADもこれと全く同じです。

 

 

権利者(アニメ会社やレコード会社など)が黙ってくれているのは、いくつかの理由が考えられます。

  • ファン活動が作品の宣伝になり、新規ファン獲得に繋がることがあるから。

  • ファンコミュニティが盛り上がることを、好意的に見ている場合があるから。

  • ネット上に無数に投稿される二次創作を、一つひとつ監視して対処するのが現実的に不可能だから。

 

そして、逮捕者が出ない最大の理由が、著作権侵害が原則として「親告罪」であることです。

「親告罪」とは、被害者である権利者が「私の権利が侵害されたので、あの人を罰してください!」と警察に告訴しない限り、事件として扱われず、罪に問われることがない、という仕組みです。

 

つまり、権利者が「訴えない」と決めている限り、逮捕されることはないのです。

 

しかし、これは決して「安全」を意味しません。

むしろ、あなたの運命は、権利者のさじ加減一つで決まるという、非常に不安定な状態にあることを意味します。

 

もし権利者が「このMADは作品のイメージを著しく損なう」「もう見過ごせない」と方針を変え、あなたを訴えたとしたら、その時に「みんなやっていたから」という言い訳は一切通用しないのです。

 

 

現実的なリスク

HIKAWA
でもまぁ、いきなり逮捕なんてされないでしょ?

 

と高を括るのは危険です。

「逮捕」という最悪の事態に至らなくても、あなたの身にはもっと身近で、現実的なリスクが降りかかる可能性があります。

 

動画の削除

これは最も頻繁に起こり、多くのMAD制作者が経験するリスクです。

権利者からの削除申請や、YouTubeなどが導入している自動検知システム(Content ID)によって、何十時間、何百時間もかけて作ったあなたの力作が、ある日突然、何の予告もなく削除されます。

時間と情熱を注いだ作品が、クリック一つでゴミ箱に消えるのです。この喪失感は計り知れません。

 

ですが、「見逃してもらっている」立場である以上、これに対して文句を言う権利はあなたにはありません。

 

 

アカウントの凍結(BAN)

削除警告を無視したり、違反動画の投稿を繰り返したりすると、プラットフォーム側から悪質なユーザーだと判断され、YouTubeやニコニコ動画のアカウント自体が停止(BAN)される可能性があります。

あなたが長年育ててきたチャンネル、アップロードしてきた他の大切な動画、ファンとの交流の記録…そのすべてが、一瞬にして失われるのです。

 

 

損害賠償請求

ここからは、金銭が絡む深刻なトラブルです。

権利者が「あなたの動画のせいで、本来得られるはずだった利益が失われた」と判断した場合、民事訴訟を起こされ、損害賠償を請求される可能性があります。

 

特に絶対にやってはいけないのが「収益化」です。
(※収益を得ていなければ著作権侵害にならない、というわけではない)

 

YouTubeの広告収入などを設定し、あなたのMADから1円でも利益を得てしまうと、話は大きく変わります。

「ファン活動」という言い訳はもはや通用しません

他人の作品で勝手にお金を稼ぐ行為と見なされ、権利者から厳しい目を向けられ、訴訟を起こされるリスクが劇的に跳ね上がります。

 

 

刑事罰(逮捕・罰金)

個人の趣味で作る音MADで、いきなり警察が家に来るようなことは、まずないと考えてよいでしょう。

しかし、可能性はゼロではありません。

著作権法には「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金」という、非常に重い罰則が定められています。

例えば、公式のDVD映像を丸ごとアップロードして販売するような海賊版まがいの行為や、権利者から再三にわたって削除要請があったにもかかわらず、それを無視して投稿を続けるといった極めて悪質なケースでは、刑事事件として立件される可能性も否定できません。

 

 

じゃあ、どうすればいいの?

HIKAWA
でもMADを作るのは面白い!どうにか犯罪にならないようにMADを作る方法はない?

 

ここまでリスクの話をしてきましたが、「作りたい!」というクリエイティブな情熱を否定したいわけではありません。

では、どうすれば法律を守り、安全に創作活動を楽しめるのでしょうか。

答えは一つです。

 

「作るのは自由。しかし、インターネット上にはアップロードしない」

 

これしかありません。

音MADを自分のパソコンの中で作り、完成した作品を自分一人で、あるいはごく親しい家族や友人に直接見せて楽しむ。

この「私的利用」の範囲内であれば、法律に触れることはありません。

 

まとめ

音MADは、非常にクリエイティブで面白い文化です。

しかし、その楽しさは、常に著作権侵害という法律違反のリスクと隣り合わせの、いわば「ガラス細工の城」のようなものだということを忘れてはいけません。

 

  • 音MADのネットへのアップロードは、著作権法に違反する行為です。

  • 「みんながやっているから大丈夫」は通用しません。それは「許可」ではなく「黙認」されているに過ぎません。

  • 動画削除、アカウント凍結、そして最悪の場合、金銭トラブルや刑事罰のリスクがあります。

 

軽い気持ちでアップロードボタンを押したその行為が、あなたの未来に暗い影を落とすかもしれません。

自分自身と、あなたが愛する作品の世界を守るためにも、どうか賢明な判断をしてください。

創作活動は、ルールとリスペクトがあってこそ、本当に価値のあるものになるのです。